<2004.6.26> 嵐を呼んでしまう男
・・・雨・・・


快晴時の枝谷
『あれえっ 何処走ってんだぁ?』 見覚えの無い

景色に 現在地確認の為 路肩に車を寄せる

大雨の中強行した遠征は 普段干上がり川底を

晒す場所さえも カフェオレを思い切り掻き混ぜた

様な姿でゴンゴン流れ下って居る 其れに気を

取られ つい分起点を見落としてしまった様だ

『ストップ!』 次の渓へと移動中の道すがら

見知らぬ地で私の悪癖が顔を出す やおら竿を

手に斜面を駆け下り 葦を掻き分け流れに出ると

低い談落ちのポイントに ミミズ餌を呉れた

グッ! 間髪入れず伝わる明確な魚信 ハッシと呉れた合せに 胸元へ飛び込むのは予想どうり白くスマートな魚体

更に上流向け車を進めれば やがて右下に現れるのは しっとり濡れた緑に包まれるような姿で見え隠れするダムが

その貯水池を辿り遡ると始めて出会う事になった渓 此処まで来てやっと気付いた 以前冶山工事の現場監督から

岩魚が濃い処と教えられた谷 其れが此処なんだと カーナビに導かれ無意識に此処まで来ていた つい思い付く

事が無かった しかし大荒れのこの日太い流れからは岩魚の魚信は拾えず 今回の状況では釣場探索として余り

参考には成らないかも   最終目的地はもう其処だとばかり車に飛び乗る 

<早朝にて>

今回の計画で朝いちの攻める釣場は 渓の奥行きも浅く 増水の不安が比較的深刻には至らないと判断した渓で

駐車スペースに届く瀬音は 車内でも優しく聞こえる 此れまでと変わらず穏かに迎えてくれた様だ 良しあわよくば

入れ食い状態も 夢では無いと思い描き まもなく訪れる夜明を ソワソワしながら心待ちにする。

酒を片手に覗き込んだ渓は トロリとした飴色の状態で釣りには申し分ない 更なる期待に膨らんで行くではないか

其れもいざ始めてみれば魚の出は渋く ヤマメに対する経験の浅い同行者は 特有のシビアな反応にタイミングが

合わず 苦戦を強いられて居る 雨水が入る事による水温の変化が 多感な里川の住人を更に気難しい気性へと

変えてしまった様で 時折抜き上げるヤマメも七〜八寸といったものだった 繊細な釣りが続いて行く。

本流筋の岩魚

暗い廊下状の 流れが大きく右折した其の先で

ポッカリ開けた空を背に でんと構える二段堰堤

左岸直下 大きく抉れた深みへの攻略を促すと

岩に身を寄せ下手から忍び寄る 絶好の位置取り

となった よしええぞ! ”ゴン!”ときめきは突然

訪れる 幅広い落ち込み発泡下向け 引き摺り込

もうと試みる奴に対し 上空向け力強い合せ・・・ 

竿と魚は対角線上に引き合い 此処まで一連の

動作は満点 重々しい引き込みで微動だもせず

釣友の竿は目一杯撓る 魚との力比べに成った

終に痺れを切らしたのは釣り人 一歩後退浅瀬に

曳き出さんと動いた刹那 ”パシッ!”乾いた音を

残し 竿先は目的を失った 茫然自失 この釣友

嵐まで呼込んんでしまった様だ。

                        oozeki